休職復職_ホープネット事件(東京地裁 令5.4.10判決)


ホープネット事件(東京地裁 令5.4.10判決)要約とポイント

1. 事案の概要

主に営業職として勤務していた原告X(双極性感情障害で休職中)が、休職期間満了を理由に会社(被告Y社)から自然退職として取り扱われたことについて、以下の主張をして地位確認、未払賃金、賞与、および損害賠償(慰謝料・弁護士費用)を求めた事案です。

  • 休職原因の主張: 本件傷病(双極性感情障害)は、職場で受けたパワーハラスメントによる業務上の疾患である。
  • 復職可能性の主張:
    1. 休職期間満了時(令和2年3月31日)に、休職前の通常の業務を遂行できる程度に回復していたか、ほどなく回復する見込みがあった。
    2. または、休職前の業務以外の他業務であれば復職が可能であった。
  • 会社の措置の違法性: 上記の理由から、自然退職扱いは無効であり、パワハラおよび退職措置は不法行為を構成する。

2. 裁判所の判断のポイント(争点と結論)

裁判所は、原告の請求をすべて棄却しました。

争点裁判所の判断ポイント
(1) 業務起因性 (本件傷病は業務上の疾患か)否定原告が主張するパワハラ行為は、認めることができないか、または、本件傷病の発症に起因したと認めることが困難であるとし、私傷病と判断された。
(2) 通常業務での復職可能性 (休職期間満了時に「治ゆ」(通常の業務を遂行できる程度に回復)していたか)否定復職可能性の判断枠組みを示した上で、主治医(復職可能とする)と産業医(復職困難とする)の見解が対立する中、産業医の判断に合理性があると認定。休職前の業務を通常の程度に行える健康状態に回復していたとは認められないと判断した。
(3) 他業務での復職可能性 (営業部担当部長以外の他業務であれば復職可能であったか)否定原告は、復職申請時に、配置される現実的可能性がある他の業務について労務の提供を申し出ていたことはもとより、職務を限定せずに復職の意思を示していたと認めることも困難であるとして、他業務での復職可能性に関する原告の主張を退けた(労務提供の申し出がない点を重視)。
(4) 不法行為の成否 (パワハラ・退職措置が不法行為を構成するか)否定原告が主張する違法行為(パワハラ行為および本件退職措置)は、いずれも不法行為を構成するとは認められないと判断した。

3. 本判決の意義

本件は、主治医(復職可能)と産業医(復職困難)の意見が対立した場合の復職可能性の判断において、以下の点を明確にした点で意義があります。

  • 復職可能性の判断基準: 就業規則上の「治ゆ」とは、休職前に行っていた通常の業務を遂行できる程度に回復すること、または復職後ほどなく上記の程度の回復が見込まれることをいう。
  • 産業医判断の重視: 原告の行動(面談の欠席、生活リズム表の未提出など)や診療経過と照らして、復職に向けた客観的なエビデンス(証拠)が不足しており、主治医の診断(患者本人の申告に基づくという限界がある)よりも、産業医の復職困難という判断が合理的であると結論付けました。
  • 他業務での復職の要件: 職種や業務内容が限定されていない労働者であっても、他の業務での復職を主張するためには、現実的可能性がある他の業務について労務の提供を申し出る必要があることを示唆しています。

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